鍼で不眠が解消
腰痛で来院されたのに、不眠が解消されたと感謝されたという不思議
一週間前に腰痛・膝痛を訴えて治療室にされた方が、再診されました。その方は、先日の治療室での鍼施術で腰痛が軽減されたことと、また同時に、施術をした日は久しぶりに深く眠れたと驚かれていました。私はその方が不眠に悩んでいるとは知らずに、腰痛と膝痛の鍼のみを施術したので、「とてもよく眠れた」という言葉を聞いて、私の方がもっと嬉しくなりました。
鍼の科学的なエビデンス
私は現在、大学の治療室に所属して鍼灸を施術しています。大学の治療室では、科学的なエビデンスや知見を基に、日々の鍼灸に向き合っております。そのため幸いにも、私は鍼灸の臨床の現場で起こる現象を理論的に説明できるように向き合える環境におります。鍼治療が睡眠にもたらす効果については、既に世界中で研究がなされております。多くは、中医学を基礎とした睡眠に良いといわれる鍼のツボに鍼をうつと、不眠症が改善されるという内容の論文です。数百もあるツボは、一つ一つ効能が異なり、不眠症には、睡眠に効くツボを使って鍼やお灸の施術をするのが一般的です。
ただし今回、私は腰痛と膝痛に対する施術を行っており、中医学の睡眠に特化したツボを使わないで施術をいたしました。それなのに、私の施術で不眠が解消されたと大変喜ばれていたので、それは私にとっては想定外な反応でした。大学の治療室で取り入れられている鍼治療に関しても、科学的なエビデンスで効果が立証されておりますが、それらの論文の多くは、首肩痛や腰痛や膝痛などの運動器を対象にしています。西洋医学系の英語論文を検索しても、睡眠に関しては、“ついでに”調査したぐらいの位置づけの論文ばかりです。そのため私も今回は、腰痛や膝痛に効果が立証されている施術を選択したのですが、“おまけ”的な“ついでに”という位置づけの睡眠の方が、今回の施術では注目を浴びたのです。
西洋医学で説明する限界
現在では、まだまだ鍼の効果については、西洋医学の視点から説明するには限界があります。しかしながら、臨床の現場においては、鍼灸の睡眠への効果が確認されているのも事実です。また、鍼治療といっても、施術者によって鍼の施術方法も異なるため、施術者が違う場合は、鍼の同じ効果を期待するのも難しいのが現状です。さらにその鍼の効果も、鍼を受ける側の個体差も大きいため、再現性にもばらつきがあります。ゆえに、鍼の効果を西洋医学だけで説明するには限界があるのです。
鍼の効果はこれから解明される
鍼灸は数千年の歴史があり、過去の産物だと思うかもしれません。しかし私はそうは思いません。まだ科学では証明できていないだけで、鍼灸は過去から未来へ続くと考えます。むしろ、これから鍼灸も進化して、現代に合った形で発展していくだろうと思います。今はまだ解明されていない鍼灸の効果も、徐々に解明されるでしょう。睡眠もまた、未解明な部分が多く、少しずつ科学的に解明されている分野なので、こちらも期待が高まります。もしあなたが鍼灸を経験されたことがないのであれば、是非一度、あなたも不思議な体験をしてみてはいかがでしょうか。
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