現代日本の就業者6300万人のうち、約17%の1000万人が交替制勤務者(シフトワーカー)であり、また、その約半数の500万人が夜勤を含む交替制勤務者です。交替制勤務者は、ガス・水道・電気などのインフラ供給作業者、飲食・宿泊業のスタッフ、トラック運転手、医療・介護従事者など多岐に亘っています。
交替制勤務と睡眠との関連で一番問題になるのは、睡眠不足と眠気です。交替制勤務では、通常の睡眠不足の問題だけでなく、睡眠時間帯のズレにより社会的時差ボケ(Social Jetlag)が生じることで、満足した睡眠がとれない状態が続きます。社会的時差ボケとは、社会的な時間と体内時計の不一致により、日中の眠気や、精神的・身体的な健康に悪影響を及ぼす不調をさします。
交替制勤務が心臓病、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの身体的な健康を乱す可能性があるのは先行研究から明らかです。最近では、交替制勤務が精神的な健康面、とりわけ、うつにつながりやすいこともわかってきました。では交替制勤務者が、不眠症による不健康な状態を引き起こさないために、どのような予防策を取り入れるのが良いのでしょうか。
①勤務スケジュールの改善
まずは、交替制勤務者の勤務先が積極的に取り入れるべき課題として勤務スケジュールの改善があげられます。できるだけ、夜勤の連続日を短くし、夜勤後の非番を十分にとる工夫をすることです。最近、働き方改革の一環として勤務先が労働条件を改善する企業も増えてきました。勤務時間そのものを見直すことは、持続可能な社会を構築する上で、重要な課題でしょう。
②計画的仮眠
個人個人ができる対策としては、計画的仮眠、光環境の調整、ストレス調整があげられます。計画的仮眠とは勤務中に約30分程度、深い睡眠段階に入る手前までの仮眠をうまく取り入れることです。仮眠は交替制勤務だけでなく、攻めの休息法としても是非どなたでも積極的に取り入れて頂きたい生活習慣です。仮眠をとるというのは、脳が疲れを感じる前に、短時間の休息をとり疲労をコントロールする、予防医学的なアプローチです。
③光環境の調整
つぎに光環境の調整とは、体内時計に最も影響を与える光を上手に取り入れることです。ブルーライトや眩しいぐらいの光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、眠気が軽減します。仕事で作業ミスを防ぐという点ではよいのですが、交替制勤務者が夜勤中に高射度の光を浴びてしまうと、体内時計が狂ってしまい、体に不調をきたします。体内時計をなるべく一定にさせるためには、夜勤後は帰宅時にサングラスをかけ、自宅の部屋は暗めに設定して、積極的にメラトニンを分泌させて眠気を高めるのが良いでしょう。(メラトニンは欧米ではサプリメントとして薬局でも販売しておりますが、残念ながら日本では医薬品扱いなので、医師に処方してもらう必要があります。)
④ストレス調整
そして、ストレス調整も大事です。仕事などでストレスを感じたら、趣味に没頭してみたり、体を動かしてみたりして、リラックスを心がけることです。鍼やマッサージなども自律神経を整えるので、ストレス調整にはとても有効です。ただ目を閉じて脳を休めるだけでも、十分に効果があるので、是非、日々の生活の中で、こまめに休息を取り入れましょう。
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット
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